【第2話】心が疲れていると、人は正しい行動がとれない

ダイエット

コロナ禍という、誰も経験したことのない状況が続いていた頃、

私の心は気づかないうちにじわじわと疲れていました。

先の見えない不安、生活の乱れ、社会全体に漂う閉塞感。

それらが静かに積み重なり、

心の奥に小さな重りのようにのしかかっていたのです。

自分では「大丈夫」と思っていました。

それなりに仕事もこなし、日常をまわせているつもりでした。

けれど、心は確実に消耗していました。

その疲れは、まず“食”に現れました。

手軽に満たされるものへと、

無意識に手が伸びてしまう。

甘いもの、しょっぱいもの、脂っこいもの——

その瞬間だけ、心のざわつきが消えるように感じられるからです。

しかし、満たされるのは本当に一瞬でした。

そのあとは決まって、

「またやってしまった」という後悔が静かにやってきます。

不安が食を乱し、

乱れた食が心をさらに疲れさせ、

その心がまた乱れた食を呼ぶ——

気づけば私は、ゆっくりとした悪循環の中を回っていました。

人は心が疲れていると、

本当に必要な行動ではなく、

“すぐに心が楽になる行動”を選んでしまいます。

それは弱さではありません。

むしろ、心が自分を守るための反応です。

けれどその反応は、

結局のところ、私をさらに苦しめていました。

「痩せたい」という思いは確かにある。

けれど、不安や焦りでいっぱいの心には、

長期的に良い選択を支える余裕がないのです。

頑張れば頑張るほど苦しくなるのは、

意思が弱いからではありません。

心の容量が限界に近づいているだけ。

疲れ切った心で、正しい選択を続けることはできません。

心が乱れれば行動が乱れ、

行動が乱れればまた心が乱れる。

この循環を断ち切るには、

行動を変える前に、

まず心を整える必要がある。

これに気づけたことが、

後の大きな変化の第一歩でした。

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